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及川に揺らされて 5

解錠ボタンを押し、エントランスを通らせたのを確認してから画面を終了させる。


「取り敢えず、お前は奥にいろ!あいつは玄関口で返す!」
「えっ!?あっ、ははい。」


別にやましい事はこれっぽっちもしていない
下心がある訳でもない
いや、むしろ押し掛けられたんだ、俺は。

ヤらしい物が大量にある中で、この状況、
というのが ややこしいだけだ。
ただでさえ面倒な状況で
誤解を招くことがとてつもなく億劫で仕方ない。








それにしても、何か、嫌な予感がする。




玄関のドアが、開いた。


「うっす!タクさん。僕です。編集部の丸山でーす!
アポなしで突然すいません」
「ど、どうしたんですか急に」
「仕事でこの近くを回ってたんすよ。
んで、タクさんのツイート見たら
『昼飯うまうま♪
食べたら作業に入るであります(*`・ω・)ゞシャキーン』
とか書かれてたんで、
丁度いいタイミングで寄れるなぁと思っ……あれ?」











……し、しまったぁぁぁ!!!







「女物の靴…?」






5秒でバレたぁぁぁぁ!!!








パンプスを見つめ、怪訝な顔をする丸山さん
無理もない。
七瀬川たくみの現状を知っているなら、
女性との接点はほぼ皆無なはずだから。
家に上げられるほどの付き合いは
まず見られないはずだから。


「……タクさん。」

顔を上げ、彫りの深い顔に更に影を落とす丸山さん。

「僕、色眼鏡でを人を見ないように、極力してるつもりですし
何か起きたって、今更タクさんはタクさんなんすけど……」

爪先から頭まで、ジッと観察されるのがわかった。







「とうとう女装の趣味に手を出しましたか…」
「んな訳あるかッ!!」





まぁ、だと思ったよ…。



「え?飢えすぎてソッチに目覚めたのかと思ったんすけど。そんなタクさんも興味ありますが。」
「俺はまだそんな引き出しは増やせません!」
「じゃあ何だろ?
あっ、俺は履けませんよーッ!
流石にこれじゃ、ちょーっと小さいっすもんねぇ」
「満更でもない顔をするな」

口を開かず黙っていれば、太陽みたいな爽やかスポーツマンなのに。
引きこもりな仕事のし過ぎで、頭がやられてしまったんだろう。


「もしかして親戚の方でもいらしてますか?」
「…あ、いや……ま、そんな感じ……ですかね…」
「ならご挨拶させてくださいよ!」
「いい!いいいい!!しなくていいですから!!」
「タクさんがいるからこそ、俺の首が繋がってるようなモンなんすよ。黙って帰るような無礼な真似はできないっす」




こんなところで律儀を発揮しないでくれ!!
どうしたらいい?
どうしたら奴を追い出せる??
一刻も早く帰せる方法…帰せる方法…



「あの、渡す物があるんですよね?新刊の見本ですか。
受け取ります受け取ります!
ありがとうございました!!!
丸山さんも他にもお仕事ありますからね、お帰りくださって全っっ然 大丈夫ですよ!」
「何を言ってんですか。もちろんタクさんの状況把握と、打ち合わせも兼ねてですよ。
ほら、ちょうど差し入れでシュークリーム持ってきたので、一緒に食べましょう。」

人懐っこい満面の笑顔。
つぶらな瞳の巨大なチワワだ。

あああああ!!!!
シュークリームー持参かぁ!
誘惑かああぁぁぁ!!!!


「おじゃましまぁーーーす」



ガチャ














ドサッ










「…ドサッ?」

シュークリームの袋が床に転がっていた。
ああ!!俺のシュークリームがぁぁッ!!
って、違う違う。



シュークリームを転がして呆然と立つ丸山さんの
その視線の先には

リビングの奥でコチラを振り向く及川。

「……」
「あ…どうも、こんにちは。」
「……」

とりとめの無い挨拶をする及川。
玄関先で返すと言ったのにスマンな!

ただ呆然と立ち尽くす丸山さん。


背中で表情が読めない。
……どうしたんだ?一体。





無言のままリビングの扉を閉め
ゆっくりとこちらに向き直り、小声で話し出した

「……誰ですか、あの方は」
「お、及川サンです」
「親戚…にしては、呼んだらマズいっすよねぇ」

……鋭いな。

「……家庭教師モノっすか、隣のお姉さんシリーズっすか、団地妻設定も、まぁまぁアリだなぁ」
「……あの、なんとなーくわかるんですが…
何の話ですか?」
「もうまたまたぁ。今、ここにいるのが僕で良かったっすよ!
いやぁーあの、タクさん
あのぉ…すんごいかわいい人見つけましたねぇ。
で、どこで呼んだんっすか?」
「いや、丸山さん……ですから」
「すいません。聞いたらすぐ帰りますから!僕も指名させてください!
どこのデリヘルっすか!?」












ゴンッッ!








大きな音が廊下に響いて
丸山が転がった。
訂正、クソ山だ。


デカい図体しやがって、何を言っている。


後から徐々に、おでこの辺りが痛み出した。










「大きな音がしたから何事かと思いましたよ」
「なんもねぇよ」
「こんな巨体を転がすなんて。どんな頭突きをかましたのか見たかったです」
「お前も大概 変態だな」

ソファーには クソ山と俺、並んで座り、水枕で頭を冷やしている。
及川は俺のシュークリーム達を並べ、コーヒーの用意をしている。

「丸山さんは、ミルクとお砂糖どうしますか~?」
「俺はブラックと…お、及川さんの愛をたっぷりおなしゃーす!」
「はいはーい」

ふざけたことを抜かす丸山に、
硬く握った拳を振り上げようとしたらヒィィィと退けたので今回は見逃してやった。



あんな勘違いをされたままでは、俺も及川もあまりに不憫なので
及川がここに来るまでの経緯を
かくかくしかじかと話した。



いつもは外で打ち合わせをするのに、こんな時に限って
丸山、突然の襲来。
しかもちゃっかり和気あいあいと話している
何だか複雑な気分だ




「-----私、そのつぶやきは、まだ見てなかったです!」
「及川さんの手料理じゃ、そりゃお仕事も頑張っちゃいますよね」
「さっきは何とも言ってなかったから、お口に合ってたかちょっと不安だったんですけど」
「うんうん。タクさん、ツイッターの方が素直で可愛いっすもんねー」
「演出です!演出ッ!!ていうか、なに及川も見てんだよ」
「ファンですから、私もこれが仕事の一貫なのであります(*`・ω・)ゞシャキーン」


…おいおい。

シャキーンって…そういう不意打ちマジで止めてくれ。

か、可愛いことしてんじゃねぇよ!!



「あぁー!落書きも上げてる!いつの間に!?保存保存。」
「するなよ。目の前でいくらでも見られるだろ。」



 


丸山の視線がイタイ。


だから、ホントにただ雇ってるだけなんで。


コイツとは何ともないのでお願いします。





「丸ちゃん。このシュークリーム美味しいねぇ」
「あ、これタクさんのお気に入りなんすよ。次は及川さんの為に期間限定を買ってきます!」
「わぁお!気になる気になる!も~ぅ丸ちゃん最っ高!」
「へへっ。俺、及川さんの下僕なんで、当然っす」


…いつから下僕になった。


「その代わりと言っちゃ何ですが、俺もここで
及川さんの手料理が食べてみたいなぁ~とか、思っちゃったりしてぇ……」

そのニタニタしたゲスな笑い、気持ち悪いぞ。

「あら、そんなこと。いいですよね、先生」
「駄目だ」

即答で答えてやる。
なに仲良くなってんだよ。
及川も!早く下心に気付けぇぇ!!


丸山が何故だと言わんばかりに目を丸くしている

「はぁ!?」
「食事くらい一緒にいいじゃないですか先生。」
「笑顔が気に食わない」
「そんなのリフジンだぁ。結構長いこと担当させてもらってるのに、そんなことで今更理由にさせませんよ!」
「さ、打ち合わせ終わったら早くお帰りください」


タクさんが冷たいよー!と
皿を片付けるために席を立った及川に、丸山はすかさず腕へと絡みついた
チワワの瞳をウルウルさせている



この野郎。
馴れ馴れしく触りやがって
女々しく絡むんじゃねぇよ



丸山を腕へぶら下げながら、
及川の大きな瞳が強い光を帯びて見下ろした。

「先生!どうか、ワタクシめの下僕に、褒美をおなしゃす」
「褒美をおなしゃす」
「どうか、エロスの先生よ、褒美をおなしゃす」
「褒美をおなしゃす」
「どうか、ツンデレの皇子よ、」
「「褒美をおなしゃす」」







こッ、こいつらぁぁぁ~~!!!



そもそも丸ちゃんってダレだ
んな柄じゃねぇだろ!!!

おなしゃすって何だ!!!

ツンデレの皇子ってどこの国だぁぁぁぁ!!!!!






らしくもなく噴火寸前なのを悟られないように
一呼吸置いてから冷静を装う。



「…丸山さん、あなた仕事しに来たんですよね。
俺だって作業時間を削ってるんですから
遊んでるなら仕事に戻ります。
及川も、なに意気投合させてんだよ。こんな気色悪い奴いちいち相手にすんな!」







あぁぁぁ~~~
何故こんなにイライラするんだ!!!
なんで俺はこんなにムカついてんだよ!!!







「せ、先生……?」
「食器、まだ片付けてねぇんだろ?それ終わったら郵送して貰いたい物があるから。もう十分休憩できただろ。早く戻れ」
「…はい」


失礼しました、といってキッチンへと消える及川。
くそぅ。
せっかくのシュークリームも台無しだ!








「タクさん」
「……んだよ」

丸山が顔を覗き込んできた。
チワワ顔のイケメンなんか見てもなぁ


拍手[0回]


こっちは面白くも何ともねぇんだよ。
不機嫌を倍増させる気かゴルァ!



「……嫉妬っすか?」






ハァ!?





見ると、睨み付けながらもニヤッとする丸山。
そして
何か含んだ影を持つ目。




「そりゃあそうですよね。女の子なんて、仕事で接点あっても普通ここまで踏み込めないっすもんね。
しかもあの人、相当な美人だし」
「……何が言いたいんですか。」


不穏な空気。
視線はお互いの腹の探りあい。


「七瀬川たくみと ただの一ファンであれば
僕、本気で狙いに行きますよ。
実際どうなんですか?そこのところ」






……おいおい


狙いに行くって、


どういうことだよ……







返答できずにいると、それを答えと取ったのか
丸山は不適な笑みを浮かべて立ち上がった。



「今日は長居をしてしまったので、また来ます。
及川さんとも約束してしまいましたしね。
では…また近々。」


席を立つと、深々とお辞儀をし
深い微笑みを見せてから
あっさりと帰って行った。












胸がザワザワする
何か嫌な予感は、続いていた。


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