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及川に揺らされて 2

まさかこんな日が訪れるとは思っても見なかった。



この部屋に
変態女がいる……。






リビングに案内はしたが
それだけで満足していただけることは無く、
誤魔化せることも無く……。

拍手[1回]





「七瀬川たくみ研究会 第1号!ワタクシ、及川 亜季 調査員は
只今から、如何にして作品が創造されているか探索致します!」

と妙なハイテンションの宣誓をされた。
本当に無遠慮に家宅捜査が始まったので
なんかもういろいろ面倒が起こる前に、



作業部屋のドアを開けてしまった。







都内某所。
2LDK マンションの一室
自宅 兼 職場。






「……おお!七瀬川たくみ先生の聖地……意外とキレイ。」


そーですか。


「漫画家さんってほら、ペンとか原稿とかいろいろ物が多くて散乱してるじゃない?そんなことないんだね」
「パソコンでほとんど済ませてるからな。」
「あ、だから2つもモニターがあるんだねぇ。」


まるで博物館にでも来ているかのように
そんなに広くもない部屋の中を物珍しそうに観察する及川。
もう早く終わらせてくれ。
ハラハラしてしょうがない。



「コレ知ってる!ペンタブレット!」
「…正解」

「わぁぁ~。絵が…生絵がある…」
「それはメモだな。今受けてる仕事のイメージだけ書き溜めしてる」
「やばい。未公開作品ですね!どうしよ鼻血出そ。私がこの世の第一発見者となるわけだ」
「後でシュレッダーかけるけど」
「うそん。」



「本も、たくさん……案外まともな本が多いんだね」
「まとも?」
「もっとエロ一色だと思ってたので、ちょっと拍子抜けです」
「期待を裏切って悪かったなぁ!」


片付けたんだよ!!!言わねぇけどな!





「おおお!こ、これは……!」

なんだ。何をみつけた。

「ののちゃんの全解剖!限定原画本じゃないですかぁぁ」
「わ、わかるんだ」
「今、オークションでとんでもない金額じゃないですか!まさかこんな近くでお目見えできるなんて」
 
両手を頬に当て、食い入るように本の背表紙を見つめている。
「改めて言うけど、触るなよ。」


 *仕事場の開放条件  その1
 物には絶対に触れないこと






「うー…蛇の生殺しだ。」
「気持ちはわからなくもないけど、ダメ。」
「ケチ!スカシ野郎!エロ大臣!」
「褒めてんのか?」
「そうかぁ…!してやられた。褒め言葉だったのかぁ…!」

もはや何に対して悔しがってるのかよくわからないので
スルーする。
唸りながら上目遣いで睨んでくるが、全然怖くない。

「じゃあ、先生が本を開いてそれを私が写メで…」
「帰るか?」


* 仕事場の開放条件  その2
 写真、動画等 データに残す行為禁止







「では、隣の部屋で今晩、私が先生にチョメチョメを差し上げれば、ののちゃんを見せていただけますか?」
「そこまでして見たいか」
「冗談です。怒んないでください。」


*仕事場の開放条件 その3
 別室は見ない、入らない




ちなみに隣は寝室。仕事をする部屋とは分けている。
作業部屋に置いていたS級レベルの危険なアレコレは
今、その寝室へ避難させている。

絶対に、行かせられない…!








痩せて少しは美人になっても、
中身は成長してしっかりと変態らしい。
あちこち見ては一々テンションを上げている。
小学生の時、
それでも及川はもっと大人しくて控えめな奴だったような気がする。
方向、誤ったんだな。可哀想に。


露出度の高い、極めてキワドイ資料も並んではいるが
そんなの物ともせずにここまで楽しんでいるのを見ると
逆に清々しい。
恥じていた自分があほらしく感じる。
いや、世間様の感覚を忘れてはいけない
こいつは変態だ。
錯覚だからな!錯覚!
気を緩めると、及川の感覚に飲まれそうだ。



「実はインテリアもちゃーんと選んでるよね」
「まぁ、自分が居心地の良い部屋が一番だしな」
「そういえば、誰か他の人を部屋に入れたりはしないの?」
「ないな。締め切り迫って本当にヤバい時は助っ人呼ぶけど、それ以外はプライベートでも呼ばない」
「あれ?…彼女は?」

「……ぁああ?」

聞くか?
それ今ココで聞くかッ?
俺の人生にどうやって取り入れるんだよ!!

「あ、ごめん聞いちゃいけなかったね!てへぺろッ」
「…こんのヤロー、殴り飛ばされたいのか」


こんなふざけた仕草も、様になるから不思議だ。











「お前さっきから人をバカにしてるだろ。もう気が済んだらさっさと帰れ」

「ごめんごめん!むしろ尊敬してるんだよ、私!」



……ぉお!
ふ、不意打ちはちょっと 怯む
……な、何を言い出すと思えば…。


「あの頃もそう。友達もいない私と仲良くしてくれて、今でも感謝してるんだよ。」

…まぁ、なんだ。感謝されるようなことした覚え無いけどな
……って、


「あれ?俺には敢えて作ろうとしてないように見えてたけど」

んー、と口を結んで何やら思い出しているようだ。
か弱き少女の心は違ったのか?

「そうねぇ。私ひねくれてたからね。仲良さそうにしてたって“どうせ私のこと心の中じゃデブって笑ってんでしょ”って思ってたね」
「まぁ、そーゆー奴いなくもないよな」
「だから、傷付くくらいなら一人でいた方がまだマシだって思ってたし、実際そんな私だから友達なんてできもしなかった」
「ふーん」

大して覚えてることなんて無いけど、俺の知ってる及川は
確かにそんな雰囲気を持ってた。
あまり笑わず、人を寄せ付けず。



「大輔君はさ、いつもそんな感じだったね」

おいおい
「どんなんだよ」
「愛想も何も無いんだけど、直球。口数少ないけど、言うことバッサリ言うの」
「…まぁ、俺だって相手は選ぶぞ?」
「最初は意地悪にしか聞こえないんだけど、壁を感じなくなってきたら、逆にその方が気が楽なんだよね」
「よく覚えてんなぁ」
「大輔くん、目立たないから余計に印象的だった」
「失礼だなおい。お前は悪目立ちだ」

微笑み、クスクスと笑う及川。
クラス一の大柄が、今では華奢という言葉がよく似合う



「ああ、そういえば、私がダイエットしようと思ったのも大輔君のおかげなんだよ」
「え?俺?」
「うん。ずーっと言っててくれてたじゃん。痩せればいいのにって」
「あー。思ってた気がしなくもない」
「わざわざ絵まで描いてくれたこともあったんだよ?コッチが今のお前、コッチが痩せたらこうなるお前って。」


あぁ、そんなこともあった。
適当に描いたつもりが
妙にリアルに描けてて、俺的に力作だった。

「当時から俺の目利きは最高だったんだな」
「はたから見たらデリカシーの無い男だからね、フツー!」
「まぁ、キレイになれたし結果オーライだろ?」






一瞬だけ、なぜか空気が止まった気がした。
しかし、また及川が話し始めたから気のせいだったかもしれない






「高校生のとき失恋してね。悔しくてダイエットしたんだぁ。
あの時、大輔君が刷り込んでくれてなかったら、簡単に諦めてたかもしれない」
「おお、お役に立てたようで何よりだ。今の及川ならモテまくりだろ」
「…まー、どーなんだろーね。」


あ、この感じは
モテはするけど面倒な問題重ねてきました、的なヤツだな。
クソッ負けた気がする。


「キャンペーンとかモデルとかポツポツ話が来るようになって、確かに自信はついたんだけど、それ以上自分に努力しなくなっちゃったんだよね。」

過去を後悔する遠い目。さっきまでのキラキラはどこに行ったんだ。

「就活は一発合格で受付嬢やってたの。でも今、会社が倒産寸前で。
そういう時の白羽の矢はね、私みたいな人がターゲット。
特に何もできない、直接利益に繋がらない、
代わりはいくらでもいるところから、無言の離職の圧力」
「おぉ怖ぇなぁ。」
「で、辞めて今に至る。」

あまりにもさらっと言われ、聞き逃しそうになった。

「…あれ?じゃ今も?」
「そうそう。もうすぐ有給消化終了のお知らせです」





なんか……大変なヤツに絡まれたなぁ。





「そこで、先生にご相談があります!!」
「うわぁ!出た。やっぱりそう来んの!?」




















「……私を、雇って頂けないでしょうか」
















「…………ハイ?」








真剣な眼差しをして
とんでもない提案が、聞こえた気がした。
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