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及川に揺らされて 1

「おー!大輔だぁ。久しぶり」
「あぁ、直樹。全然変わってねぇなぁ」
「イヤイヤおまえもな!」

当時12歳の小学生だった俺たちは、今
28歳となって再び集まっている。
そう、いわゆる同窓会。

全く変わらず図体だけデカくなった奴もいれば
オトナの色気、ここにあるけどどう?と言わんばかりに目立つ奴もいれば
こいつ誰だっけ?と名前すら思い出せない奴もいる。

俺はきっと、ツルんでいた友達以外は

拍手[1回]


端から見れば大概3番目。
まぁだから、潔く蚊帳の外はなかなか面白い。


地元に住んでいたら、狭い町のことだ
偶然すれ違うこともたまにはあるかもしれないが
俺のように上京したり、遠方に住んでしまったりすると
10年なんて軽く顔を合わせていないことになる



「…直樹。お前、だいぶ揉まれてるなぁ」
「え?わかるの?俺は揉む方が好きだけど」
「バカッ!違ぇーよ。何の話だ」
「アノ話」
「うるせー」

何かと敢えて下ネタに走ろうとする直樹。
そのノリが相変わらずで
安心する

「お前、ちょっと疲れた顔してんなーと思っただけ」
「あーそうかも。去年から大阪へ転勤になってね。朝から晩までガッツリ仕事だよ。
今回ようやく久しぶりにまともな休みが取れて」
「おぉ、頑張ってんだなぁ~。何だなんだ昇給か?」
「ん、まぁ。支店長候補として飛ばされてるから、そんな感じかな」


はい!早速来たぞ!!!
半分ジョーダンで聞いたつもりが
早速ココロにチクッと効たぞ!

もう、アッチョンブリケ。


「大輔はどうなんだよ。」
「あ、俺…?」
「今何してんの?」
「イ、イラストレーターのアシスタント業」
「おーすげぇな!そういやお前、絵うまかったもんなぁ」
「ぁああ!ほら向こうからヒロム来た。宏武~~!」



あー、焦るアセル
あわてて会話を逸らせてしまった。

ごめん直樹。
半分、嘘だ。
ちょっと言えない。

頭の中で何度もイメトレしたこの会話の流れ
大丈夫。大丈夫。
自分から深い話さえしなければ問題ない。




自分で言うのも何だけど
その道では、まぁ一応
軌道に乗ったイラストレーターをしている
アシスタントではなく、本業。
上京したのも地元では行動の限界を感じたから。

といっても世間一般でイメージされるような仕事だったら
それこそ名刺をガンガン渡していただろう。



でも、それは、できない。











俺の本名 佐々木大輔

そっちの名前は 七瀬川たくみ






イラスト属性“萌え”
専門分野“年齢制限”

本の挿し絵はもちろん、
白黒のマンガで描くこともあれば
ゲームというキャラクターデザインで動く時もある。

二次創作から這い上がりました
俺、七瀬川たくみをよろしくな☆(キラッ)







なぁーーーーんて!!!言える訳ねぇーーー

元々、上手く会話がかわせる訳でも
大した社会経験がある訳でもないので
今回のように、何も知らない地元友達に対しては
半分、嘘を突き通す事になる。
心苦しいけれど、勘弁してください神様。


旧クラスメイトはそれぞれ、
卒業してからどんなことをしてきたかとか
今何をしているかとか
過去の思い出話なんかにも爆笑させている。
乾杯も済ませ食事もアルコールも入り、だんだんと賑やかに盛り上がっていく






「まじで!?嘘、全然わからなかったぁ!」
「やばーーーい」
「超きれいになったねぇ!」
向こう側にいる女子の塊でキャッキャと黄色い声が上がった


こんな時、ハンター直樹のアンテナキャッチは早い

「あんな子、クラスにはいなかったよ」
「え?」
目を向けてみる。クラスメイト達の頭が死角になり、あまり見えない。

「かわいい。超ドストライク。近づきたいけど誰だかわかんなすぎて話しかけられない」
「そ、そんなに?」


…あ!見えた!確かにかわ……






……あ。




部屋の隅で群がる女子たちの中、
地元のアットホームな空気感に紛れて
ひと際垢抜けてキラキラとした美人さんが、そこにはいた。













俺は知ってる。







「及川ッ!!?」

「…ええぇ!??」






呼んでしまった。




当時
教室の、一番後ろの窓際の席が、俺。
その隣が、及川 亜季。




「あ、大輔君!わぁー久しぶり。大きくなったねぇ!」
「おお、まぁ。」
「よくわかったねぇ。すごいすごい!」
「…ええぇ…及川って…あの?……えぇ???」
「あ、覚えてますか?」

直樹はしどろもどろ。
俺と及川を見比べてからの、及川をガン見。
あからさまだな、おい。



隣の席だから必然、話す機会が多かった

小学生のクセに一匹狼でいようとする変な奴。



まともに会話をしていたのは

たぶん俺ぐらいだったと思う。


こういうのは類は友を呼ぶというのか



いやそれでも、かなり意気投合していた。




ただ当時の及川は……何ていうか、









単なるデブだった。










最初は戸惑っていた直樹も打ち解け始め、
だんだんと女子の輪に入ることに成功し始めていた。
ハンター、目的は達成しつつある。

それぞれ子育て相談会を開いていたり
担任の武勇伝を回想していたり
さっそく連絡先の交換をしている奴らもいる













一人、外の自販機に来てみた。


大の大人が広くもない部屋でワイワイしているのは
圧迫感が凄い
酒も入った人ごみの中の、部屋の酸素の薄さとか
同じ28年を生きてきた、違う人生もある現実とか。



自分の仕事には全身全霊かけてるし
それに対してのプライドや
自分で掴みに行く挑戦
有難いほど様々な人に支えられて
今、誰よりも愉しんでいると思う。


と、改めて考えたところで
残念ながら
人様へ公に話すことはない。

現状、後ろめたさ満載。
むしろドン引き確定だ。
ま、どちらかというとオープンスケベなんだけどな!ははっ!






自販機で買ったコーラと、夜の外の空気で
ちょっと休憩。










「いたいた」
「うぅわ!出た。来んなよ及川。」
「失礼ねぇ!」
「そんな肉の無いお前は知らねぇよ。どちら様だよ」
「さっき見事に見抜いたのはどちら様よ」


慣れない美人が隣に来てクスクス笑う。
脳内で美フォーアフターの比較をしてみる

「30kgは痩せたか?」
「ホント失礼ね!27kgですー」
「当ってるじゃん。相当 頑張ったなぁ」
「いやいや、そういう数字女の子に言わせないでよ。ていうか話したいこと逸れちゃうじゃん」
「ん?話したいこと?」



アフター及川は向き直り、しっかり俺の目を捉えた。

なんだこれは。

自販機の明かりの所為か、やけに目がキラキラと輝いて見える。






















「七瀬川たくみ先生ですよね?」



















「………ハアァ!??」





……

ぅぉぉおぉぉおおおおおおい!!!!!!

どおどおどどういうことだよ



何故お前がその名前を知ってる!??

待て待て待てちょっと待てぇぇぇぇぇ!!!!!!!









「………おん?」

「目、泳ぎまくって挙動不審だよ」




肩を震わせて必死に笑いをこらえている







ど、どういうことだよ。
どこまで知ってんだよ。
どうすればいいんだよ。
えええ!?









「こんな私でもねぇ、ダイエットしたらキャンペーンガールなんかも呼んでもらえるようになって」



う?うんうん。

なんだよ急に


まぁ、あの及川から認めたくないけど
美人になったもんなぁ。



「3年くらい前かな。あるゲーム会社のイベントのコンパニオンをすることになって。その時、ちょっと離れたブースで見つけたの。
七瀬川たくみセンセイ。新人クリエイターとして、ゲストに呼ばれてた」








嘘だろ。

覚えてる。
キャラデザの初仕事を貰えた時だ。
小さなステージに各担当が並んで、トークイベントをした。



俺の方向性を決めた、


18禁のお兄たんゲーム……







ああぁ!!
もう 空の彼方へ投げて欲しい
その姿はさながら、アンパンから愛のクーリンヒットを受けたバイキンのように。


地中深くまで埋めてほしい
蝋燭とヒールでグリグリされながら。
あぁ、ちょっと妄想し間違えた。

人間 思わぬパニックには弱いのか
俺にはまだそんな趣味はなかったはずだ。



地の底から這い上がるようなため息しか出てこない

動揺しすぎて変な汗が出てきた。

あんな会場に、フツー来ねぇだろ……





「及川…それ、忘れてくれ。ついでに、俺の存在も忘れてくれ……」


よし!遺言を書こう!
あーあ。もうちょっと、親に財産残してやりたかったな
そしてできることなら、
もっとぷりぷりの若い女の子の肌に触れて、
悶えるほどリアルな描写を描いてみせたかったな……





「何言ってるの?私、七瀬川たくみ先生の大ファンなんです!」

「……ハァ!!?」





天の声が 聞こえた気がした



「ホームページの更新も、いつも楽しみにしてるんです」




いや、
待て待て。現実に戻れ
及川もそんな嬉々とした眼差しで言うな。

ホームページって、
近況報告と
二次創作の際どいエロ画像しか上げてないぞ




「伝説文庫のラノベも全作品買いました!!」

おいおい、どんな顔してあんな おっぱいの表紙買ってんだよ。




「あ、ドラマCD持って来たんですけど、サイン頂けますか?」

「ファンかよッ!!!」







あぁーーーーもう!!!
なんなんだよコイツは!!!

顔が熱くなってきた




「だから七瀬川たくみ先生のファンなんだって。」

「もういいからお前、ここで出すなよ!持って来るなよそんな物!!」

手に持っていたクラッチバックから、その繊細な長い指先で
見覚えのあるピンク色のCDケースを出そうとしていた。
慌てて押し戻すが、及川はしれっとしている。







「頼むから、このことは誰にも話さないでくれないか。」

今のこの及川なら、誰に何を仕出かすか解からない、と踏んだ。


「だ、誰か、身内とか友達とかに話したりは…?」
「ううん。まだ一度も。」

ほんの少しの、安堵。

「こ、これは仕事として割り切ってるんだ。プライベートまで干渉したくない。
だから、もうこの話題は一切出さないでくれ」
「ええ勿体ない!こんなステキな絵を描くのに?」
「…勿体ないとかそういう問題じゃないだろ」
「仕事 貰えるチャンスあるかもしれないよ?」
「いらないから!アピールできないから!知られたら生きて行けないから」
「じゃあ私がアピールしてあげよっか?七瀬川たくみ先生のプレゼンならできるよ」

「違うんだって!!
ふざけんなよ!!!
佐々木大輔がこんな絵ぇ描いてんだよ!!!」



ハッとした。
思わず声を荒げてしまった。

きっと、素直に提案してくれたんだろう。



目の前の及川はキョトンとしている






「…わかるだろ?七瀬川たくみの前に、あいつらにとっては大輔なんだ。
頼むから、もう何でもするから黙っててくれないか。」



懇願。
細心の注意を払っていたのに、
まさかこんなところでバレるとは。
男ならまだしも、何故、コイツなんだろうか。
もし人生やり直せるなら、あのトークイベントの件 無かったことにしたい。



伏し目がちに及川は黙ってしまった。
な、泣いてんのかな…?
どどどうしよう。
女の子に対して怒鳴るとか、最低だな俺。
えええ。
ちょっと、どうしたらいいんだよぉ~。







急に、パッと及川が顔を上げた。
瞳孔を大きく開き キラッキラの目をしている








「では、七瀬川たくみ先生の仕事場を見学させてください!!」







くりっとした目は、悪戯心がある訳でも
オトナで濁った目をしてる訳でもなく
純粋に、至って真っ直ぐ見つめてくる。

そして
にっこり。

女神が降臨した。









「……いや、それ、無理だろ。」
「大丈夫です。」
「いやいや、大丈夫じゃなくって。何を言ってるか解ってんの?」
「私も今、東京に住んでるし。」
「距離じゃねぇよ」
「あ、そういうクリエイティブな仕事はしてないので偵察とか盗んだりとかもしないし!」
「んな心配してねぇよ」
「その辺の過激なファンとは違うから、ストーカー行為もしないよ?」
「その辺にいたら困るだろ!!」







もう、何が起きてんのか俺がわからない。
えー
冗談だよなッ




「仕事場って……仕事場だよな?」
「はい!仕事場でございます。勿論、その仕事っぷりはおおよそ伺っております」
「何を存じ上げてるか知りませんが、
丁寧にお断りさせていただきます。」
「あ、そういえばスマホにもCDデータ入れたんですよ。ななほちゃん、最っ高にかわいいですよね!ちょっと皆にシェアしてきますッ!」
「待て待て待て待てぇ!!!!」



走り出そうとする及川を全力で引き留めた。
頭、沸いてんのか?





「待て。お互い冷静になろう!!」
「はいはい」
「仕事場ってことは、いろんな資料があるわけだ」
「そうですね」
「同業者の、参考サンプルなんかも、たくさんある」
「先生ですからね」
「女性が目も当てられないような、そういう資料も
当然、参考までに置いてあったりする」
「男性向けですね」
「そうだ。だからこの話は、無かったことに」
「おまわりさ~ん!!卑猥なCDでセクハラされてまー」
「わかったぁッ!!わかったから、大声出すな!!」

「やったぁ!」


にひひと笑う
及川の
子どもの様に、無邪気でイタズラで満足気な笑顔は
子どもの頃と全く変わらなかった。
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